2026-05-22

自分の店だから本気で改善できる — 自社サービスを使い倒す営業のかたち

売り物のメタバース空間を自分たちが毎日の本番運用で使い込むからこそ、当事者として直すべき場所が分かる——デモではなく「今動いている本物」を見せるモデルルーム型の営業姿勢について綴ります。

#経営#空間設計

「実際に使ってみないと、本当の使い勝手は分からない」。これは、どんなサービスにも言えることだと思います。

カタログの写真は美しく、デモは滑らかに進む。けれど、それは見せるために整えられた状態であって、毎日の本番運用の手触りとは別物です。私たちはメタバース空間の体験設計を仕事にしていますが、売り物のことを本当に理解しているか、と問われたとき、作り手の視点だけでは足りないと感じていました。

デモ用の作り物では、本音が見えない

見せるためだけに用意された空間は、どうしても都合よくできています。人が一人もいない静かな部屋を案内し、トラブルの起きない手順だけをなぞる。そこに嘘はありませんが、現実の運用で起きることの多くは、そういう整った場面の外側で起きます。

人が同時に集まったときの重さ。初めて訪れた人がどこで戸惑い、どこで離れていくのか。説明したつもりの導線が、実際には伝わっていないこと。こうした手触りは、作り物のデモの中では決して表に出てきません。

だから、自分たちが毎日使う

そこで私たちが選んだのは、自分たちのメタバース空間を、まず自分たちが毎日の本番運用で使い込むという方針でした。

特別なことを言っているつもりはありません。料理を出す店主が自分の料理を食べ、道具を作る職人が自分の道具を使う。それと同じで、売る側が日常的に使っていなければ、どこが不便でどこを直すべきかは当事者として分からない、というだけのことです。使う立場に立って初めて、見せる立場では見えなかったものが見えてきます。

使う側になって、初めて見える改善点

実際に運用してみると、気づくことの種類が変わります。

たとえば、初めて来た人が思ったより早く帰ってしまう。その理由は、機能の不足ではなく、最初の数十秒で「ここで何をすればいいのか」が伝わっていないことだったりします。あるいは、自分たちは慣れているから何とも思わなかった操作が、初めての人には小さなつまずきの連続になっている。

こうした改善点は、データを眺めているだけでも、外から評価するだけでも出てきません。自分が当事者として毎日その場に立ち、不便を自分ごととして抱えているからこそ、直すべき場所がはっきりと分かる。改善が本気になるのは、それが他人の課題ではなく自分の課題だからです。

見せているのは、今動いている本物

私たちが提供しているのは、空間を販売したり、場としてレンタルしたりする事業です。そして検討してくださる方にお見せしているのは、デモのために組んだ仮の空間ではなく、実際に人が訪れ、私たち自身が日々使い続けている空間そのものです。

不動産でいう、誰も住んでいないパンフレットの完成予想図ではなく、実際に暮らしのある部屋を案内するモデルルームに近いかもしれません。きれいごとだけでなく、運用の中で見えてきた工夫も、まだ手を入れている途中の部分も含めて、今動いているありのままをご覧いただく。そのほうが、判断する側にとっても誠実だと考えています。

誰もいない整えられたデモ用の作り物の空間と、人が訪れ自分たちが毎日使い込む今動いている本物の運用空間を対比した図

一番の説得力は、使い続けている事実

うまい売り文句をいくらでも並べることはできます。けれど、それより強いのは、売っている本人が毎日それを使い続けているという事実だと思います。

自分の店だから本気で改善できる。自分が使うものだから、不便を見過ごせない。その積み重ねが、見せかけではない空間を育てていきます。私たちは、その育ち続けている本物を、これからもそのままお見せしていくつもりです。

その後、この「空間を貸す」という事業のかたちについて、もう少し掘り下げて書きました。空間を“貸す”という事業 — メタバースの中の部屋を、不動産になぞらえて考える で続けています。

Boundary LAB は「境界を越える体験を設計する」会社です。自社ホスティングのメタバース rezona を運営しています。空間づくりのご相談は X(@shuuuuuuvuu)の DM へ。私たちについては Boundary LAB について もどうぞ。