7月4日、Xのタイムラインで「AIセカンドブレイン」という言葉が急に流れてきた日があった。Machina氏(@EXM7777)による海外の投稿を、19万人を超えるフォロワーを持つチャエン氏がこちらの投稿で日本語で紹介したもので、反応の大きさからして、しばらく話題が続きそうな気配だった。
内容はこうだ。Obsidianというメモアプリの中に「raw(未加工の素材置き場)」「entities(人・会社・道具など具体的な事物のページ)」「concepts(概念や気づきをまとめたページ)」「INDEX.md(全体の索引)」という4つの引き出しを作る。そこにAIエージェントを住まわせ、情報を読み込ませては整理させ、既存のページと照らし合わせて矛盾があれば知らせ、索引を更新させる。使えば使うほど賢くなる、自分専用の業務基盤を作ろう、という話だった。
読みながら、少し落ち着かない気持ちになった。これ、うちが今まさにやっていることに近いんじゃないか。
答え合わせをしてみた
見比べてみることにした。
- INDEX.md(AIが最初に読む索引) → うちには「MEMORY.md」という、上限の行数を決めた1枚の索引がある。毎回の作業の最初に自動で読み込まれる、会社の地図のようなものだ。
- entities/concepts のwikiページ+相互リンク → うちのメモは「1ファイルにつき1つの事実」で細かく分割してあり、種類ごとに分類したうえで、お互いにリンクを張ってある。
- 意思決定の記録 → うちには追記専用の台帳がある。GOかNO-GOか、いつ何を判断したかを積み上げていくだけの帳面だ。新しい提案が出たとき、以前決めたことと矛盾していないかをこの帳面を引いて確かめる。同じ議論を蒸し返さないための仕組みだ。
- 毎晩の整理・毎週の点検 → 朝には、判断待ちのことを並べる小さな会議のようなものがある。夜には、その日の区切りをつける確認がある。そして週に一度、記憶と現実がずれていないかを健康診断する監査もある。外出先からは、Discordの窓口AIに一言送れば、それが「受信箱」に構造化して保存され、次の朝会で正式な判断として反映される仕組みも動いている(この窓口を作った顛末はこちらに書いた)。
一つずつ照らし合わせてみて、少し安心した。似ている、というより、ほぼ同じ発想のものを先に組んであった。
このメモ基盤を1系統にまとめ直したのが6月中旬で、判断待ちの整理や点検までを含めた日々の運用ループとして回り始めたのは7月頭のことだ。もとになる書き足し自体はもう少し前、5月あたりから少しずつ積んできたものが土台にある。急に思いついた話ではなく、地味に積み上げてきた結果が、たまたま今流行っている型と重なっていた、というのが正直なところだ。
それでも、足りないものが二つあった
答え合わせをして終わりにするのも、面白くない。ちゃんと比べてみると、うちに欠けている部分も二つ見つかった。
一つは、外から入ってくる情報を受け止める「取り込み口」だった。話題の記事やX投稿を見て「これ、うちに使える情報だろうか」と考える瞬間は日常的にあるのに、それを一度どこかに素材として置いてから判定する、という決まった通り道がなかった。思いついたその場で判断して終わり、記録に残らない、ということが起きていた。
もう一つは、点検の自動化だった。週に一度の健康診断は仕組みとしてはあったが、毎回自分で「そろそろやろう」と思い出して手動で走らせていた。仕組みはあるのに、動かす引き金だけが人間任せになっていた。
その日のうちに、両方作った
見つけた抜けは、そのまま放っておくには惜しかった。外から拾った情報をまず素材として保存し、既存の資産と突き合わせて「使えるかどうか」を判定する、という決まった通り道を一つ作った。もう一つ、週次の健康診断を、人間が思い出さなくても自動で走る仕組みに変えた。今日がその初回の自動実行にあたる。
流行りの手法をなぞって真似た、というより、先に似た形で組んであったものの答え合わせをしたら、抜けていたネジが二本見つかって、その日のうちに締め直した。そんな一日だった。
記憶の設計も、体験の設計と同じだった
私たちは普段、メタバースの中で「入場した瞬間から退場まで、感情の動きを設計する」ということをやっている。今回気づいたのは、自分たち自身の記憶や判断の流れにも、同じ設計の目線が必要だということだ。何を最初に読ませるか、何を1件ずつ分けて残すか、何を過去の判断として参照させるか。これも一種の体験設計なのだと思う。対象が人ではなく、自分たちを支えるAIだった、というだけの話だ。
Boundary LAB は「境界を越える体験を設計する」会社です。自社ホスティングのメタバース rezona を運営しています。空間づくりのご相談は X(@shuuuuuuvuu)の DM へ。私たちについては Boundary LAB について もどうぞ。