先日、私たちが運営しているメタバース空間で、初めての「ルームツアー」イベントを開きました。
正直に言えば、当日いちばん緊張したのは内容ではなく、人数でした。
来場者は約24人。これは事前に想定していた数の、およそ2.4倍にあたります。
倍以上の人が一度に集まると、運営側がまず心配するのは「空間がもつのか」です。動作が重くなったり、誰かが入れなくなったり、最悪の場合は落ちてしまう。そういう絵が頭をよぎりました。
結論から言えば、空間は最後まで安定して動きました。想定の倍以上が同時にいても、目立った不具合は起きなかった。
ただ、終わってから振り返ると、本当に向き合うべき課題は別のところにあった、というのが正直なところです。この記事では、開いてみて分かった4つのことを書き残しておきます。
1. キャパシティの不安は、思ったより杞憂だった
準備段階で最も時間を使ったのは「何人まで耐えられるか」でした。
ところが実際には、想定の2.4倍が来ても空間は崩れませんでした。事前に積み上げた負荷への備えが、結果として効いた形です。
もちろん、これは「いくらでも入れる」という話ではありません。ただ、少なくとも今回の規模では、人数そのものがボトルネックにはなりませんでした。
これは安心材料であると同時に、ひとつの気づきでもありました。私たちが一番恐れていた問題は、実は一番の問題ではなかったのです。
2. 「落ちないこと」より「居続けてもらうこと」が難しい
技術的に落ちないことと、参加者が最後までいてくれることは、まったく別の話でした。
今回いちばん明確に残った反省は、ゲストが早い段階で離脱しがちだったことです。
空間に入る、見渡す、けれど早めに抜けていく。その流れを、私たちは十分に設計できていませんでした。
来てもらうための導線は考えていたのに、来たあとに「居続けたくなる」理由の用意が足りなかった。安定して動く器を作ることと、その中で時間を過ごしたくなる体験を作ることは、別の仕事なのだと痛感しました。
3. 声が一方向だと、「イベント」が「配信」になる
もうひとつの反省は、音声です。
当日は、主催側から参加者へ向けた一方向の発信がほとんどで、双方向の会話がなかなか生まれませんでした。
これは致命的な不具合ではありません。けれど、メタバース空間でわざわざ集まる意味を考えると、見過ごせない点です。
声が一方向に流れるだけなら、それは「イベント」というより「配信」に近い。同じ空間にいる人同士が言葉を交わせてこそ、その場に集まった価値が出ます。
聞く体験は成立していた。けれど、語り合う体験はまだ設計できていなかった、ということです。
4. それでも満足度は高かった — 何が効いたのか
一方で、参加者の満足度は5段階換算で平均4.41相当と、高い数字でした。
早期離脱や一方向の音声という課題を抱えながら、なぜ満足度はこれほど高かったのか。
ひとつ言えるのは、空間が落ちずに最後まで安定していたこと、そして「同じ場所に集まった」という体験そのものに、一定の価値があったのだろうということです。
不便がなかったわけではない。それでも、その場にいた時間に意味を感じてもらえた。この数字は、課題を直視するための出発点であって、満足してよい終着点ではないと受け止めています。
次回に持ち越すこと
今回のいちばんの学びは、「動くこと」と「居たくなること」は別だ、という当たり前の事実でした。
次回に向けて設計し直したいのは、二つです。ひとつは、参加者が早く抜けない、滞在したくなる流れ。もうひとつは、声が双方向に行き交う設計です。
器は十分に耐えました。次は、その器の中で過ごす時間そのものを、もっと丁寧に組み立てていきます。
運営の記録を残すのは、うまくいったことを誇るためではなく、次に同じ場を開く人のために、正直な手応えと反省を渡しておきたいからです。
Boundary LAB は「境界を越える体験を設計する」会社です。自社ホスティングのメタバース rezona を運営しています。空間づくりのご相談は X(@shuuuuuuvuu)の DM へ。私たちについては Boundary LAB について もどうぞ。