「監視ダッシュボード」と聞くと、たぶん大企業を思い浮かべる
サーバーの状態を映した大きなモニターが何枚も並び、専任のチームが24時間それを見張っている。そういう光景を想像する人が多いと思う。
うちは、社員がほぼ1人の小さな会社だ。それでも先日、自社専用の監視ダッシュボードを自分たちで作った。1人の会社が監視ダッシュボード、と言うと大げさに聞こえるかもしれない。でも作ってみて思うのは、むしろ小さい会社こそこれが要る、ということだった。
理由はシンプルで、見ておきたいものが増えていたからだ。自社で動かしているメタバースのサービスや、その裏で静かに動いているいくつものしくみ。数が増えるほど、頭の中だけで全体を把握するのは難しくなる。気づけば「あのサービス、今ちゃんと動いているんだっけ」と不安になる瞬間が増えていた。
本当に見たかったのは、2つだけだった
機能をあれこれ盛り込もうとは思わなかった。突き詰めると、知りたかったのは2つだ。お金と、サービスの健康状態。
ひとつは費用。クラウドのサービスは、使った分だけ料金が積み上がる。通信量、保存しているデータの量、音声配信にかかる分。どれも単体では小さくても、気づかないうちに静かに膨らんでいく。月末の請求を見て驚く、というのは小さな会社にとってわりと怖い出来事だ。だから日々の推移を内訳ごとに眺められるようにした。今日はどこにどれだけかかっているのか。それが見えるだけで、見えない不安はかなり減る。
もうひとつは健康状態。サービスが落ちたとき、いちばん最悪なのは「落ちていることに自分が気づいていない」状況だ。利用者に指摘されて初めて知る、というのは避けたい。だから各サービスがちゃんと動いているか、利用状況はどうかを一目で確かめられるようにした。何かおかしいとき、原因の当たりをすぐ付けられること。これがこのダッシュボードの大きな目的のひとつになっている。
なぜ「1枚」にこだわったのか
費用は費用の管理画面、サービスの状態は別の画面、指標はまた別の場所。本来それぞれ見に行こうと思えば見に行ける。でも1人の会社では、その「見に行く」という手間そのものが重い。
あちこちのページを順番に開いて、数字を頭の中でつなぎ合わせて、ようやく全体像がわかる。これを毎日やる時間はない。だから費用も健康状態も利用状況も、タブで切り替えながら1枚の画面で見渡せる形にした。朝、その画面をひらけば会社の今がだいたいわかる。確認の手間が小さいほど、確認の回数は増える。回数が増えるほど、異変に早く気づける。1人だからこそ、時間が何より惜しいのだ。
既製品ではなく、自作した理由
世の中には優れた監視サービスがいくつもある。それを使う手もあった。実際しばらく検討もした。
それでも自作を選んだのは、身の丈に合わせたかったからだ。多機能なサービスは、たいてい大きな組織の使い方を前提にしている。うちには過剰だし、料金もそれなりにかかる。何より、自分が本当に知りたい形に画面を整えたかった。どの数字を、どう並べて、どう見せるか。そこは人に決めてもらうより、自分の不安に合わせて自分で決めるほうがしっくりくる。完璧な万能ツールより、自分の会社にちょうどいい1枚のほうが、結局よく使うものになった。
小さい会社ほど、見える化が効く
作ってみてはっきりしたのは、見える化の効果は会社の大きさに反比例するのかもしれない、ということだ。
大きな組織には、数字を見る専任の人がいる。小さな会社にはいない。だからこそ、経営者が片手間でも全体を把握できる仕組みが要る。費用が膨らむ気配も、サービスの不調も、推測ではなく観測で捉えたい。「たぶん大丈夫だろう」で進めて、後から痛い目を見るのは、規模が小さいほど響く。
立派なダッシュボードである必要はない。自分が毎朝ひらきたくなる、ちょうどいい1枚があればいい。経営を勘ではなく事実の上に置くこと。その第一歩は、案外こういう地味な画面から始まるのだと思う。
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