2026-07-23

話題の技術選定ポストを見て「うちも改善できるのでは」と調べたら、答え合わせで終わった話

Xで52.8万表示・5,293ブクマを集めた「個人的Webサービスを作るときの構成 2026」という投稿を見て、うちの本番環境も見直せる部分があるのではと一つずつ突き合わせてみた。結果は、ほぼ推奨構成どおりに動いていて、事業運用ならではの判断で足している部分もあった。焦って乗り換える前に棚卸しをすると、答え合わせになる。

#インフラ#経営#開発運用

Xのタイムラインで、ある投稿がよく流れてくる日があった。catnose氏(@catnose99)による「個人的Webサービスを作るときの構成 2026」という投稿で、静的ページ・サーバー・DB・ストレージ・メール配信・決済・認証まで、2026年時点でどれを選ぶといいかを一枚にまとめたものだった。表示は52.8万、ブクマは5,293。しずかなインターネット「sizu.me」を運営していることでも知られる方の投稿で、反響の大きさからしても、しばらく引用され続けそうな内容だった。

読みながら、素直にドキッとした。ここに挙げられている項目、うちの本番環境は今どうなっているんだっけ。改善できる余地があるんじゃないか、と思って、一つずつ照らし合わせてみることにした。

一つずつ突き合わせてみた

投稿の中身と、うちが実際に事業として動かしている構成(メタバース rezona・管理画面・監視ダッシュボード・自社サイト boundarylabo.com)を並べてみる。

  • 静的ページ → Cloudflare:うちは Droplet+Caddy で自社サイトとゲームコンテンツを配信し、画像などのアセットは Cloudflare R2 に置いている。配信基盤は違うが、「重いアセットはR2」という判断はすでに一致していた。
  • サーバーが必要な場合 → TanStack Start / Next on Vercel:うちはメタバース本体を Render(Bunランタイム)、管理画面を Vercel、監視ダッシュボードを Droplet の docker で動かしている。単一の答えではなく、用途ごとに置き場所を分けている状態だった。
  • DB → D1 / Turso / Supabase / Neon:先方が挙げた4択のうち、うちは Neon と Supabase の2つをすでに本番で使い分けていた。
  • ストレージ → R2 / S3:うちも R2。ここは満点で一致。
  • メール配信 → SES / Resend / Cloudflare Email:うちは Resend を使っている。以前 SMTP まわりで詰まった経験があり、その後 Resend に移行した経緯がある。
  • 決済 → Stripe:うちも Stripe。一致。
  • 認証 → BetterAuth:うちは Privy と Supabase Auth の組み合わせ。ここだけ選んでいる道具は違った。

一通り並べ終えて、少し拍子抜けした。項目のほとんどが、すでに実際に動いていたからだ。

事業として運用するからこそ、足している部分

ただの答え合わせで終わらせるのも面白くないので、なぜ違う道具を選んでいるのかも考えてみた。すると、個人開発の構成ガイドには出てこない、事業として動かしているからこその判断がいくつか見えてきた。

一番わかりやすいのは音声まわりだ。うちのメタバースには、リアルタイムで会話できる音声SFU(LiveKit)が入っている。この手のリアルタイム音声通信は UDP という通信方式を使うのだが、メタバース本体を動かしている Render はこの UDP に対応していない。だから音声SFUだけは Vultr の VPS に独立して置いている。これは流行りかどうかではなく、「動くか動かないか」で決まった選択だった。

もう一つは監視の層だ。事業として本番を回している以上、ダッシュボードによる監視は必須で、それに加えて自宅のホームラボでも別系統の監視を併走させている。個人開発の構成ガイドは「サービスをどう作るか」の話だが、こちらは「動かし続けるにはどう見張るか」まで含めた構成になっている。

用途ごとに Render・Vercel・Droplet・Vultr を使い分け、そこに監視の二重化まで足す。個人開発の構成としては過剰かもしれないが、事業を止めないためには、これくらい足しておく方が釣り合っている気がしている。

採用しなかったものにも、それぞれ理由があった

先方の推奨で、うちが採っていないものについても触れておきたい。避けているというより、今のところ乗り換える理由が見当たらない、という判断だ。

  • D1 / Turso:エッジで動く軽量なSQLite系のDBだが、今の Neon と Supabase で不足を感じたことがない。実際、Neonは容量が枯渇しかけたことが一度あったが、それは移行の理由にはならず、運用でしのげる範囲だった。
  • BetterAuth:Privy と Supabase Auth ですでに用は足りている。認証まわりを入れ替えるコストに見合う利点が今は見えない。
  • TanStack Start:新しい選択肢として面白いとは思うが、乗り換える具体的な理由が今のところない。

ここまでの道具にも、それぞれ小さな痛い目を見た記憶がある。R2では一時的なCORSエラーに振り回されたことがあったし、Renderでは負荷が集中して輻輳したこともあった。Resendへの移行自体も、前段のSMTPが壊れたことがきっかけだった。今の構成は、教科書どおりに選んだというより、実際に動かしながら痛い目を見て、その都度直してきた結果でもある。

流行を見て焦る前に、棚卸しをする

見終えて思ったのは、話題になっている技術選定を見るたびに「うちは遅れているんじゃないか」と焦る必要はない、ということだった。今回は、改善できる場所を探しに行ったつもりが、ほとんどの場所ですでに同じ答えにたどり着いていた。違いがあった部分も、流行に乗り遅れていたからではなく、事業として運用するために別の判断をしていただけだった。

私たちは普段、メタバースの中の体験を「入場した瞬間から退場まで、感情の動きを設計する」という目線で見ている。今回気づいたのは、自分たちを支えている裏側の構成にも、同じ棚卸しの目線が要るということだ。流行を眺めて焦る前に、まず自分の足元を一つずつ並べてみる。それだけで、たいてい答え合わせになる。

Boundary LAB は「境界を越える体験を設計する」会社です。自社ホスティングのメタバース rezona を運営しています。空間づくりのご相談は X(@shuuuuuuvuu)の DM へ。私たちについては Boundary LAB について もどうぞ。