2026-06-07

JPYCとは?日本円ステーブルコインの仕組みと使い方を分かりやすく解説

JPYCとは日本円に1:1で連動する国内初の資金移動業型ステーブルコインです。普通の暗号資産との違い、買い方・使える場所、旧JPYC(プリペイド)との違い、注意点までを初心者向けに解説します。

#経済設計

「JPYCとは何か」「日本円のステーブルコインって結局どういうもの?」と検索してこの記事にたどり着いた方に向けて、できるだけ専門用語をかみ砕いて整理します。この記事を読むと、(1) JPYC がどういうお金なのか、(2) 普通の暗号資産(仮想通貨)と何が違うのか、(3) どこで使えてどう手に入れるのか、(4) 旧来の「JPYCプリペイド」との違いと注意点、までがひととおり分かります。投資の推奨や価格の予想はしません。あくまで「仕組みを知る」ための解説です。

JPYCとは何か

JPYC(ジェーピーワイシー)とは、日本円に 1:1 で連動するように設計された、円建てのステーブルコインです。発行しているのは JPYC株式会社とされています。

「ステーブルコイン」という言葉は、価値が安定する(ステーブルな)ことを狙って作られたデジタルのお金、という意味です。ビットコインなどの暗号資産は値段が大きく上下しますが、ステーブルコインはその逆で、特定の通貨に価値をぴったり合わせることを目指します。JPYC の場合はその対象が日本円で、1 JPYC がつねに 1円に連動するように設計されている、と説明されています。

ポイントは、JPYC が 2025年10月27日に金融庁の正式な承認を受けて発行が始まった、とされている点です。これに先立つ 2025年8月18日には、資金決済法という法律にもとづく「資金移動業者」として登録されたと発表されています。資金移動業とは、ざっくり言えば「お金を送る・受け渡しする業務」を正式に許された事業者のことです。報じられているところでは、これは国内で初めての円建てステーブルコイン発行体としての登録であり、日本で唯一の資金移動業型ステーブルコインだとされています。法律にもとづく裏づけを持って発行されている、という点が JPYC の大きな特徴です。

普通の暗号資産(仮想通貨)と何が違うのか

ここがいちばん混同されやすいところなので、整理しておきます。

普通の暗号資産(ビットコインやイーサなど)は、値上がり・値下がりが前提のものです。1単位の値段が日々大きく動くので、「いくらの価値があるか」がそのときどきで変わります。

これに対して JPYC は、値上がりを期待して持つものではありません。1 JPYC = 1円 という連動を保つことを目指して設計されている、とされています。言いかえると、円の価値をそのまま、プログラムから扱える(送ったり、自動でやり取りしたりできる)形に置き換えたもの、というイメージが近いです。

もうひとつの違いは「いつでも日本円に戻せる」とされている点です。JPYC は、いつでも日本円と 1:1 で償還(換金)できる、と説明されています。値段が安定し、しかも円に戻せる裏づけがある——この二つがそろっているために、安心して受け取り、決済に使える、というのが暗号資産との大きな違いです。

なお技術的な置き場所としては、JPYC は Ethereum(イーサリアム)・Avalanche(アバランチ)・Polygon(ポリゴン)という3つの「チェーン」の上で発行されているとされています。チェーンとは、誰がいくら持っていて、誰から誰へ動いたかという記録を、改ざんしにくい形でみんなで共有しておく台帳のようなものだと考えてください。お金の所在と移動を、特定の一社の帳簿だけに頼らず記録しておく仕組み、というイメージです。

どこで使える・買えるのか

JPYC は、少しずつ実際の場面で使われ始めているとされています。

報じられている例としては、お好み焼きの「千房」での利用や、いわゆる DeFi(中央の管理者を置かずにプログラムでお金を扱う仕組み)、小売店での決済などがあります。2026年4月の「AI・人工知能EXPO」では、日本円ステーブルコインを使った AI による決済のデモが公開された、とも伝えられています。「人が買い物で使う」場面と、「機械が自動で支払う」場面の両方で顔を出し始めている、というのが今の段階のようです。

手に入れ方については、JPYC株式会社が提供するサービスを通じて日本円と交換する形が基本とされています。ステーブルコインは前述のとおりチェーン上で扱われるため、受け取りや保有には、その JPYC を入れておく「ウォレット」と呼ばれる入れ物(スマホアプリなどの形をとることが多い)が必要になる、という点だけ押さえておくとよいでしょう。具体的な手続きや手数料、対応するウォレットは時期によって変わりうるため、利用を考える場合は発行体や公式の案内で最新情報を確認してください。

普及の数字も少しずつ出ています。発行から約1.5ヶ月で保有者が10万人を超えた(2025年12月時点)とされ、累計の発行額は2026年4月15日時点で21億円を超えた、と発表されています。まだ社会全体のお金のやり取りから見ればごく小さな点ですが、立ち上がりつつある段階だと言えそうです。

旧JPYC(プリペイド)との違い

「JPYC」という名前自体は、実は以前から存在していました。ここを混同すると理解がずれてしまうので、分けて押さえておきます。

かつての JPYC は「前払式」——つまり、あらかじめお金を払って受け取る商品券やプリペイドカードに近い性質のもの(JPYCプリペイド)でした。前払式には、日本円への払い戻し(換金)に制限があるという特徴があります。買ったぶんを使うことはできても、原則として日本円に戻すことは想定されていなかった、ということです。この旧来の形は 2025年6月に新規発行を停止したとされています。

一方、2025年10月から発行が始まったとされる新しい JPYC は、資金移動業にもとづくステーブルコインで、いつでも日本円と 1:1 で償還(換金)できる、とされています。「使うだけでなく、いつでも円に戻せる」という点が、旧来のプリペイド型との決定的な違いです。

| | 旧 JPYC(プリペイド) | 新 JPYC(ステーブルコイン) | | --- | --- | --- | | 法的な位置づけ | 前払式(プリペイド) | 資金移動業 | | 円への換金 | 制限あり | いつでも 1:1 で償還できるとされる | | 状況 | 2025年6月に新規発行停止 | 2025年10月発行開始 |

検索して出てくる古い情報が「換金できない」と説明している場合、それは旧来のプリペイド型を指している可能性があります。新しい JPYC とは別物として読むと混乱しません。

注意点・リスク

便利になりそうな仕組みですが、新しいものには影の側面もあります。フェアに見ておきたい点をいくつか挙げます。

第一に、発行している会社(発行体)が健全であり続けられるか、という点です。「いつでも円に 1:1 で戻せる」という裏づけは、発行体がその体制を維持できてこそ成り立ちます。

第二に、規制の動向です。ステーブルコインは法律にもとづいて始まったばかりの領域で、制度がこの先どう変わっていくかは見通しにくい部分があります。

第三に、扱い方のリスクです。チェーン上で動くお金である以上、ウォレットの管理や送り先の確認といった、自分の側の注意も必要になります。送金は基本的に取り消しがききにくい、という性質も覚えておくとよいでしょう。

繰り返しますが、この記事は仕組みを知るための解説であって、投資や保有をすすめるものではありません。「便利になるかもしれない」と「安全だ」は別の話として、自分で最新情報を確認したうえで判断してください。

まとめ

  • JPYC とは、日本円に 1:1 で連動するように設計された円建てステーブルコイン。発行は JPYC株式会社とされる。
  • 2025年8月に資金移動業者として登録、2025年10月27日に金融庁の正式承認で発行開始。国内初の円建てステーブルコイン発行体で、日本で唯一の資金移動業型とされる。
  • 普通の暗号資産と違い、値上がりを狙うものではなく、いつでも日本円と 1:1 で償還(換金)できるとされる点が特徴。
  • Ethereum・Avalanche・Polygon の3つのチェーン上で発行されている。
  • 旧来の JPYCプリペイド(前払式・換金制限あり、2025年6月に新規発行停止)とは別物。
  • 発行体や規制のリスクはあるので、最新情報を確認してフェアに見るのが大切。

最後に少しだけ私たちの話を。Boundary LAB は空間の体験を設計する会社で、空間の中での「ちょっとした気持ちの受け渡し」や「小さな入場料・少額課金」をどう自然に扱うかを考えています。円に連動し、しかもプログラムから扱えるお金が整っていくと、こうした空間内のお金のやり取りに活きる場面があるかもしれない——あくまで「かもしれない」という温度で、私たちはこの動きに注目しています。背景にある関心は、思索的に書いた別記事 円がデータのように動き出すとき — 日本円ステーブルコイン JPYC に私たちが注目する理由 にまとめています。

Boundary LAB は「境界を越える体験を設計する」会社です。自社ホスティングのメタバース rezona を運営しています。空間づくりのご相談は X(@shuuuuuuvuu)の DM へ。私たちについては Boundary LAB について もどうぞ。